白杖の役割 前編

 前回の記事「補助具その2 白杖(はくじょう)について」に関連した内容です。

 

私は強度乱視と中心暗点があるため、輪郭がはっきりと見えません。

強度近視でもあるので、手で届く範囲以外のものはぼやけて見えています。

また、羞明もあるので、晴れている日は遮光眼鏡を使用します。

比較的、夜間の方が見えやすいです。

 

このような見え方なので、歩行時には白杖を使用しています。

今回は前編と後編の二回に分けて、白杖を使用している際に経験したことの中で、みなさんに伝えたい内容を紹介します。

 

 

【体験談①】

去年の夏の出来事です。歩道の信号が青になったので左右を確認しました。渡ろうとした時、一人の女性に声を掛けられました。

「遠くから救急車が来ています。もう少し待ちましょう。」

救急車のサイレンの音は聴こえていたので何度も左右を確認したのですが、私が横断しようとした道路を救急車が走行していることや、近づいていることに気付かなかったのです。

幸いこのときは、私の白杖を見て女性が支援をしてくださり、救急車が近づく横断歩道を渡らずに済みました。これからは、サイレンが聴こえても救急車両の位置に確信がもてなければ、通過するまで待ったり周囲の人に尋ねたりすることも必要だと思った出来事でした。

 

【体験談②】

京都の特産物を販売しているイベントに行きました。食品だけではなく手鏡やポーチなどの小物も販売されており、京都ならではの素敵な商品がブースごとに陳列されています。

会場の中は多くの人で賑い、品物を見ながら歩く人たちはあらゆる方向に向かって行き来します。

「買い物を楽しみたいけれど、この人混みの中を移動するのは、集中力を使うな・・・。」

と思い、楽しい気持ちよりも不安が大きくなっていきました。

そんな気持ちを抱えながら買い物をしていると、あることに気が付きました。白杖を持っている私の姿を見て、周囲の人たちは無理に通り抜けることを止めたり、歩く速度を遅くしてくれたり、時には進む方向のスペースを空けてくれたりしているのです。

不安が少し和らぎ、イベントを満喫することができました。

 

ちょっとしたことですが、安全を確保するために人の手を借りることの大切さや周囲の方の気遣いを改めて感じました。

 

これらの経験談を、教員だったときには子供たちに話すようにしていました。白杖をもって歩くことに抵抗を感じている人もいます。また、見えにくい見えないため、白杖に対する周囲の好意に気が付けないこともあります。私の経験を通して、白杖とはどういう有用性があるのか知ってほしかったのです。